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レポート

スマートコミュニティへのアプローチ

はじめに

「再生可能エネルギーを大量に導入したコミュニティがスマートコミュニティ」

最近、行き詰ったスマートコミュニティ関連のプロジェクトの担当者から相談を受けることが多くなった。その根源は、冒頭の誤った認識にあるとほぼ確信している。

「コミュニティ」というからには、その地域が主役にならなければならない。スマートコミュニティの完成形がいかなるものかは私にはわからない。しかし、スマートコミュニティの議論を進めていくうえでは、その地域に適合したコンセプトをデザインし、新しい視点から取り組むことが重要である。

本稿では、現在、全国各地で展開されているスマートコミュニティの議論に関する問題点と地域に求められる着眼点について述べる。

以上を通じて、ICTや再生可能エネルギー等を基軸にしたスマートコミュニティに関する総括的な認識と新しい視点を示すとともに、そこに秘められた可能性を提示できれば幸いである。

スマートコミュニティへのアプローチ

1)なぜ、スマートコミュニティなのか?

さまざまな環境問題への対応が求められているなかで生まれてきた考え方である。そもそも環境問題とは、我々の生活や経済活動に伴って発生する環境負荷が地球や自然界が許容できるキャパシティを超えてしまうことから起こってきているものであると考えることができる。つまり、現状のペースのまま、発展途上国等での人口増加に伴い、都市開発が進むとどんどんメタボリックな状態を助長してしまうことになる。

体脂肪率を極小化した都市やコミュニティを形成していく必要があるということから注目されてきたのがスマートコミュニティである。

2)インフラの特性に着目したアプローチ

スマートコミュニティを議論するにあたっては、そのコミュニティを構成するインフラ全体を見渡す必要がある。最近、言われている「地産地消」をどのような手順でアプローチをすればよいかという視点で見ていただきたい。図1は、スマートコミュニティ関連のプロジェクトに携わっている事業者の方々とのディスカッションを通じて、整理しているものである。

図1 インフラに着目したスマートコミュニティへのアプローチのポイント

インフラに着目したスマートコミュニティへのアプローチのポイント

例えば、「情報」つまり、ITやICTは、遠隔地の情報を一瞬に手元で閲覧することができる。また、電力というエネルギーは、遠くに運びやすい性質を有するエネルギーである。言い換えると、現在、注目が集中している電力は、インフラという視点でみると「電線をどうつなぐのか?」という議論に集約されるものである。循環資源とは、我々が日常的に発生する廃棄物や未利用のバイオマス資源等を意味する。これは、該当する循環資源の発生量や品質、受入先の立地状況等によって適切な「横持ち移動」の範囲が異なってくる。また、「水」は非常に重たい資源であり、遠隔に供給するのは困難なものである。さらに、エネルギーのなかでも「熱」というのは、蓄熱の技術やインフラ整備に要するコスト等の諸問題があるため、その有効利用を図る場合には、なるべく近いところで融通し合うことが前提となる。「人・物」とは、いわゆるモビリティや物流の議論であるが、居住地から食品スーパーや勤務先等は近い方が、利便性が高かまることはいうまでもない。

これらの図は、特定に地域等におけるコミュニティ形成や地産地消の議論をする際には、同図の右側の方から議論を進めていくことが、地域づくりやコンパクト化に向けた方向性を得ることにつながることを意味する。ところが、昨今の国内におけるスマートコミュニティの議論は、「電力」に固執している感が否めない。その結果、「地域」とのつながりが極めて希薄な取り組みばかりが先行し、手詰まりになってしまうという状況を招いてしまっている。

同図の下側には、それらを巡る議論の方向性を「一極集中」か「分散型」かという視点で整理している。

ICTの分野では、「クラウド化」が主流である。これは、各種のデータを集中管理する意味であるから、一極集中側に議論がシフトしている。一方、電力では、東日本大震災以降、「原発」や「地域独占」に対する社会的な批判が高まっている。その流れで「分散型」が重要であるという論調になっている。循環資源に関しては、我々の家庭から排出されるごみを例に述べたい。我が国は、「自区域内処理」の考え方が根底にあることに起因し、清掃工場の数が先進国のなかでは圧倒的に多い。あまりに分散化が進んでしまったため、個々の清掃工場の稼働率が低下し、さまざまな観点で非効率な状況に陥っている。それを改善するために、ごみ処理を広域化し、地域ごとに集約した方が効率的であるという主張が主流となっている。

ここで言いたいことは、「集中型」か「分散型」の議論は、時代の背景等によって、常に振り子が触れるものであり、どちらを「是」とするかという結論を出しにくいという事実である。つまり、「最適」という言葉は安易に使われるが、何をもって「最適」なのかは十分に議論されていない。現時点で答えは持ち合わせていないが、スマートコミュニティの議論のなかではこうした点、つまり、どの程度の規模でインフラの最適化を検討していくべきなのかを整理していかなければいけないと考えている。

地域におけるスマート化の検討を進めていくうえでは、以上に示した視点を留意しておく必要がある。もちろん、ここに示したものだけでなく、例えば、食料の地産地消をどう考えるかという視点を加える議論もあってもよい。それにもかかわらず、現在、主に国内で展開プロジェクトに目を向けるといかがであろうか。エネルギー、とりわけ電力に偏ったアプローチがやたらと目につく。エネルギーが重要な社会インフラであることは言うまでもないが、それだけに固執するとスマートコミュニティの議論が行き詰ることが多いようである。

この点に関しては、第4節でも詳述させてもらう。

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